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見守り・介護準備

親の施設の食費・居住費が高い…負担限度額認定で安くなる?対象と申請の進め方

介護保険施設の食費と部屋代は原則として全額が自己負担。所得と預貯金が基準以下なら負担限度額認定で上限が下がります。対象になる施設、段階ごとの金額、2026年8月の改定点、申請の進め方を整理しました。

親が特別養護老人ホームや老人保健施設に入ることが決まって、あとから「思っていたより高い」と気づく方は少なくありません。介護保険が効くのはサービス費の部分だけで、毎日の食事代と部屋代は原則として全額が自己負担だからです。

ただし、所得と預貯金が一定額より少ない場合に、この食事代と部屋代の上限を下げてくれる公的な仕組みがあります。「介護保険負担限度額認定」(制度としては特定入所者介護サービス費、現場では補足給付とも呼ばれます)です。申請しなければ適用されない、いわゆる「申請主義」の制度なので、知らないまま何年も満額を払い続けている方もいます。

この記事では、どの施設のどの費用が対象になるのか、誰が対象になるのか、いくらまで下がるのか、そして遠くに住む家族が何をすればよいのかを順番に整理します。2026年8月から金額と所得の基準が変わった点にも触れます。

施設の費用は「介護保険が効く部分」と「効かない部分」に分かれる

介護保険施設に入ったときに毎月請求される費用は、大きく四つに分かれます。

  • 介護サービス費 ── 介護保険が適用され、自己負担は原則1割(所得により2割・3割)
  • 食費 ── 原則として全額自己負担
  • 居住費(部屋代・滞在費) ── 原則として全額自己負担
  • 日常生活費 ── 理美容代、おむつ代(施設により扱いが異なります)、日用品、教養娯楽費など

このうち食費と居住費には、国が「これくらいが平均的」という水準として定めた基準費用額があります。食費の基準費用額は2026年8月から1日1,545円(それまでは1,445円)とされていて、30日分に直すと月に4万6千円ほどです。居住費は部屋のタイプによって額が違い、個室で毎日払うか、四人部屋で毎日払うかで、月の負担が数万円単位で変わってきます。

つまり、要介護度が同じで介護サービス費が同額でも、「どんな部屋に入ったか」「食費の軽減を受けているか」で、支払総額はまったく違ってきます。見学のときに月額の総額しか聞いていないと、この内訳が見えません。

軽くなるのは、どの施設のどの費用か

負担限度額認定でカバーされるのは、食費と居住費(滞在費)だけです。介護サービス費の1割負担分や、おむつ代・理美容代といった日常生活費は対象になりません。

また、すべての高齢者施設が対象になるわけではありません。対象になるのは、介護保険法上の「介護保険施設」と、短期入所(ショートステイ)です。

対象になる 対象にならない
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)/地域密着型の特別養護老人ホーム/介護老人保健施設/介護医療院/短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ) 有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅/軽費老人ホーム(ケアハウス)/グループホーム(認知症対応型共同生活介護)/小規模多機能型居宅介護 など

ここは誤解が生まれやすいところです。「介護施設に入ったのだから軽減があるはず」と思って問い合わせたら、入った先が有料老人ホームで対象外だった、という行き違いがよく起きます。親が入る施設がどの種類にあたるのかは、契約書やパンフレットの正式名称で確かめておくと確実です。デイサービスの昼食代も、この制度の対象ではありません。

施設の居室でベッドから起き上がる高齢男性を介助する介護スタッフ
同じ施設でも、個室か相部屋かで居住費は大きく変わります。部屋のタイプは費用に直結する情報です。

対象になるかどうかは「所得」と「預貯金」の両方で決まる

認定を受けるには、次の二つをどちらも満たす必要があります。片方だけでは通りません。

1. 世帯全員が住民税非課税であること

本人だけでなく、同じ世帯の人全員が住民税非課税であることが条件です。さらにこの制度では、世帯を分けている配偶者も判定に含めます。住民票を別にしても、配偶者に住民税が課税されていれば対象になりません。世帯分離で負担を軽くできると聞いて手続きしたのに結果が変わらなかった、という相談が多いのはこのためです。

2. 預貯金などの資産が基準以下であること

預貯金、有価証券、投資信託、タンス預金などを合わせた額で判定します。負債があれば差し引きます。段階ごとの基準は次のとおりです。

利用者負担段階 おおよその所得の目安 預貯金等(単身) 預貯金等(夫婦)
第1段階 生活保護を受けている方、または老齢福祉年金を受けていて世帯全員が住民税非課税 1,000万円以下 2,000万円以下
第2段階 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年82万6,500円以下 650万円以下 1,650万円以下
第3段階① 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年82万6,500円超120万円以下 550万円以下 1,550万円以下
第3段階② 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年120万円超 500万円以下 1,500万円以下
第4段階 上記にあてはまらない方 対象外(軽減はありません)

ここでいう「年金収入等」は、課税年金と非課税年金(遺族年金・障害年金を含みます)の合計に、合計所得金額を足したものです。遺族年金は税金がかからないので所得の話から抜けがちですが、この判定では計算に入ります。

なお、第2段階と第3段階①の境目は、2026年8月から年80万9千円以下だったものが年82万6,500円以下に改められました。これまで第3段階①だった方が第2段階に移り、負担が下がるケースがあります。

2026年8月から、上限額が引き上げられた

物価や食材費の上昇を受けて、2026年8月1日から食費と居住費の負担限度額が見直されました。引き上げの対象は主に第3段階で、第1段階と第2段階の食費は据え置きです。

食費の負担限度額(1日あたり)

利用者負担段階 2026年7月まで 2026年8月から
第1段階 300円 300円(据え置き)
第2段階 390円 390円(据え置き)
第3段階① 650円 680円
第3段階② 1,360円 1,420円

基準費用額(軽減を受けない第4段階の目安)も1日1,445円から1,545円になりました。第2段階の方であれば食費は1日390円ですから、軽減がない場合とくらべて1日あたり千円以上、1か月で3万円以上の差になります。

居住費の負担限度額(1日あたり・2026年8月から)

利用者負担段階 多床室(相部屋) 従来型個室 ユニット型個室的多床室 ユニット型個室
第1段階 0円 380〜550円 550円 880円
第2段階 430円 480〜550円 550円 880円
第3段階① 430円 880〜1,370円 1,370円 1,370円
第3段階② 530円 980〜1,470円 1,470円 1,470円

従来型個室に幅があるのは、特別養護老人ホームと、老人保健施設・介護医療院とで額が違うためです。また、老人保健施設や介護医療院の多床室については室料の扱いが別途見直されており、施設の種別によって請求の形が変わることがあります。金額は制度改正のたびに動くので、実際の額は認定証に書かれている数字と、施設からの請求書で確かめてください。

申請の進め方と、遠くの家族ができること

手続きそのものは難しくありません。時間がかかるのは、むしろ書類を集める部分です。

  • 申請先 ── 親の住民票がある市区町村の介護保険担当窓口。郵送で受け付ける自治体も多くあります
  • 主な必要書類 ── 介護保険負担限度額認定申請書、介護保険被保険者証、本人と配偶者の通帳の写し(直近2か月以内に記帳したもの。複数の口座があればすべて)、同意書。有価証券などがあればその残高がわかるもの
  • 有効期間 ── 原則として毎年8月1日から翌年7月31日まで。継続するには毎年申請が必要です
  • 認定後 ── 交付された負担限度額認定証を施設に提示します。提示してはじめて請求額に反映されます

遠方に住んでいる場合、まず親の住む市区町村のウェブサイトから申請書をダウンロードし、記入したものを帰省時に本人に署名してもらう、という進め方が現実的です。通帳の写しは、コンビニのコピー機で記帳済みのページを撮れば足ります。施設に入所していれば、施設の相談員(生活相談員・支援相談員)が申請の段取りを手伝ってくれることも多いので、まずは相談員に「負担限度額認定を出したい」と伝えてみてください。

申請してから認定証が届くまでは、自治体にもよりますが数週間かかります。適用の開始は原則として申請月の初日からなので、月をまたぐ前に出しておくほうが有利です。

認定が下りなかったときに、ほかに見るところ

第4段階と判定されて軽減が受けられなかった場合でも、費用に関わる制度がほかにもあります。

  • 高額介護サービス費 ── 介護サービス費の自己負担が月の上限を超えたときに、超えた分が払い戻される仕組みです。食費・居住費は対象外ですが、サービス費の負担は抑えられます
  • 高額医療・高額介護合算療養費 ── 医療と介護の1年間の自己負担を合算して、上限を超えた分が払い戻されます。入院と介護が重なった年は確認する価値があります
  • 社会福祉法人等による利用者負担の軽減 ── 一定の要件を満たす低所得の方について、社会福祉法人が運営する施設で負担の一部が軽減される制度です。実施しているかどうかは法人と自治体によって異なるので、施設と市区町村の両方に確認が必要です
  • 医療費控除 ── 施設の種類によって、自己負担額の一部または全部が医療費控除の対象になる場合があります。施設が発行する領収書に控除対象額が記載されていることが多いので、確定申告の前に見てみてください

いずれも「申請すれば受けられる」もので、黙っていて自動的に適用されるものではありません。

つまずきやすいところ

更新を忘れる

有効期間は1年です。毎年7月ごろに自治体から更新の案内が届きますが、案内は親の住所に届きます。郵便物を施設で受け取っていたり、空き家になった実家に届いていたりすると、そのまま気づかずに8月から満額請求になってしまいます。家族のカレンダーに「7月・負担限度額認定の更新」と入れておくのがいちばん確実です。

預貯金が増えたことを伝えていない

相続でまとまったお金が入った、保険が満期になった、といった事情で預貯金が基準を超えたときは、届け出が必要です。あとから判明すると、軽減された分をさかのぼって返すことになり、加算金が科されることもあります。

「うちは持ち家があるから無理」と思い込む

この制度の資産要件は預貯金などの金融資産で見るもので、実家などの不動産は含まれません。持ち家があっても、所得と預貯金の条件を満たせば対象になります。空き家になった実家をどうするかという話と、この認定の可否は別の話だと考えてください。

ショートステイのときに出し忘れる

ショートステイも対象です。在宅で介護をしていて、ときどきショートステイを使っている段階から申請できます。「施設に入所してから」と考えていると、その間の食費・居住費を余分に払うことになります。

現場から一言:私たちが高齢のお客様のお宅で書類の整理をお手伝いしていると、負担限度額認定証が封も切られないまま郵便物の山に埋もれている、ということがときどきあります。制度そのものより、案内が届いたことに気づけるかどうかが実は分かれ目です。遠方にお住まいなら、親御さんの郵便物のうち「市区町村から届く封筒」だけは家族が確認できるようにしておくと、更新忘れは防げます。
出典:厚生労働省「令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(介護保険最新情報Vol.1506・令和8年5月29日)、北九州市「食費・居住費にかかる利用者負担の軽減制度(負担限度額認定)」、桜川市「令和8年8月1日より介護保険施設等における食費・居住費が変更となります」、小美玉市「令和8年8月からの介護保険制度の見直しについて(負担限度額)」。記載の金額・要件は2026年9月時点で公表されている内容です。制度は改正されること、また運用の細部は自治体によって異なることがあるため、実際の申請にあたっては親御さんがお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または施設の相談員に最新の内容をご確認ください。費用の実額については、施設から交付される請求書・重要事項説明書をご確認ください。

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本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。