高齢の親がごみを出せなくなったら?自治体の「戸別収集」とヘルパー・地域の手助けの使い方
親のごみ出しがつらくなってきたときに使える支え方を、自治体の「ふれあい収集・戸別収集」、介護保険のヘルパーによる生活援助、自治会や社会福祉協議会などの地域の手助けに分けて整理。対象者の条件の例と、離れて暮らす家族が確かめておきたいことをまとめました。

帰省したとき、勝手口の横や物置の陰に、口を縛ったごみ袋が三つも四つも置いてあるのに気づくことがあります。「どうしたの」と聞くと、親は「収集日を忘れちゃって」「朝はまだ寒いから」と笑ってごまかします。けれど本当の理由は、集積所まで袋を持って歩くのがつらくなってきた、ということが少なくありません。
ごみ出しは、毎週何度も決まった時間に、重い袋を持って外を歩く家事です。足腰が弱ってきた親にとっては、掃除や料理よりも先に難しくなることがあります。そして、出せないごみが家の中にたまり始めると、片付けの問題、衛生の問題、ご近所との関係の問題へと広がっていきます。
この記事では、高齢の親のごみ出しが難しくなってきたときに使える支え方を、自治体の制度、介護保険のサービス、地域の手助けの3つに分けて整理します。離れて暮らす家族が、帰省のときや電話で確かめておきたいことも合わせてまとめました。
ごみ出しが「最初につまずく家事」になりやすい理由
ごみ出しには、ほかの家事にはない難しさがいくつも重なっています。
- 時間が決まっている──地域ごとに「収集日の朝8時30分まで」などと出す時刻が決まっています。朝の支度に時間がかかるようになると、間に合わなくなります
- 重さと距離──生ごみや資源ごみの袋は意外に重く、集積所が坂の上や道路の向こう側にあると、杖や歩行器を使っている人には大きな負担です
- 分別が細かい──燃えるごみ、プラスチック、びん・缶、ペットボトル、古紙と、品目ごとに曜日が違います。カレンダーを見て判断する手間が、少しずつ負担になります
- 天気に左右される──雨や雪、冬の朝の冷え込み、夏の暑さの日は、外に出ること自体が危険になります
こうした理由から、本人の気持ちとしては「まだ自分でできる」と思っていても、実際には出せない日が増えていきます。家族が気づくきっかけは、冒頭のような「たまった袋」のほか、冷蔵庫の中に古い食品が残っている、台所のにおいが気になる、といった小さな変化であることが多いものです。
自治体の「ごみ出し支援」とは
ごみ出しが難しい高齢者や障害のある方のために、市区町村が独自にごみ出しを手伝う制度を設けていることがあります。名前は地域ごとに違い、「ふれあい収集」「戸別収集」「訪問収集」などと呼ばれています。
環境省が2021年3月にまとめた「高齢者ごみ出し支援制度導入の手引き」によると、こうした制度を導入している地方公共団体の割合は、平成30年度の調査で23.5%、令和2年度の追加調査(令和3年1月時点)で34.8%でした。増えてはいるものの、すべての自治体にあるわけではありません。親の住んでいる市区町村にあるかどうかを、まず確かめることが出発点になります。
同じ手引きでは、ごみ出し支援の仕組みを大きく4つのタイプに分けています。
| タイプ | 誰が運ぶか | 特徴 |
|---|---|---|
| 直接支援型(直営) | 市区町村の職員 | 職員が家ごとに収集に回る |
| 直接支援型(委託) | 委託を受けた事業者 | 市区町村が収集を事業者に任せる |
| コミュニティ支援型 | 自治会・NPOなど | 地域の団体の活動を市区町村が補助金などで後押しする |
| 福祉サービスの一環型 | 福祉の担当部署の事業 | 生活支援サービスのひとつとして行う |
また、国の側でも、市区町村がこうした支援を行う費用について、令和元年度から特別交付税の算定項目が設けられています。自治体にとっても取り組みやすくなってきている分野だといえます。
対象になる人の例
対象者の条件は自治体ごとにかなり違います。実際の例を2つ挙げます。
- 東京都板橋区「高齢者・障がい者世帯のごみ戸別収集」──65歳以上の方だけの世帯(一人暮らしを含む)で、全員が要介護または要支援の認定を受けている場合などが対象。集積所までごみを出すのが難しい世帯の玄関先で収集します。申請書を管轄の清掃事務所へ郵送して申し込みます
- 横浜市(旭区)「ふれあい収集」──原則として一人暮らしの高齢者や障害のある方で、集積場所まで持ち出すことが難しい方が対象。65歳以上の方、要介護認定を受けた方などが含まれ、同居の家族がいても、その家族も同じような状態であれば対象になる場合があります。ボランティアが集積場所まで運ぶか、市の職員が収集に伺います
板橋区のように「全員が要介護・要支援の認定を受けている」ことを条件にしている自治体もあれば、横浜市のように事前の調査で判断する自治体もあります。同居の家族がいると対象外になる場合が多い点も、確認しておきたいところです。
ごみが出ていないときの「声かけ」
自治体によっては、収集日にごみが出ていないとき、職員などが声をかける仕組みを設けているところがあります。横浜市のふれあい収集の案内にも、ごみが出ていない場合に声をかけることがある旨が書かれています。
離れて暮らす家族にとっては、ごみ出しの手助けと同時に、週に何度か誰かが玄関先まで来てくれることにもなります。ただし、これは見守りを目的とした制度ではないので、声かけの有無や、そのあと家族に連絡が来るかどうかは自治体によって違います。安否確認の役割まで期待するなら、別の見守りサービスと組み合わせて考えるのが安全です。

介護保険のヘルパーにごみ出しを頼む
親が要介護の認定を受けていれば、訪問介護(ホームヘルプ)の生活援助として、ヘルパーにごみ出しを頼むことができます。厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」では、生活援助の「掃除」の中に「ゴミ出し」がはっきり挙げられています。
ただし、ヘルパーの訪問は曜日と時間が決まっています。収集日の朝に合わせて訪問してもらえるとは限らないため、次のような工夫が必要になることがあります。
- 収集日の前日に訪問してもらい、まとめた袋を玄関の外の決められた場所に置いてもらう(前夜に出してよいかは地域のルールを確認)
- 収集日の朝の訪問に合わせて、ほかの家事も組み合わせる
- 分別だけをヘルパーと一緒に行い、運ぶのは自治体の戸別収集にお願いする
どこまでお願いできるかは、ケアプランの内容と事業所の体制によります。家族と同居している場合は、生活援助が使えない、または使える範囲が限られることもあります。まずは担当のケアマネジャーに「ごみ出しで困っている」と具体的に伝えてみてください。ヘルパーに頼めることの全体像は、ヘルパーさんに何を頼める?訪問介護で頼めること・頼めないことの境目でまとめています。
要支援の方や、認定を受けていない方の場合は、市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」の中で、住民ボランティアなどによる生活支援が用意されていることがあります。こちらは地域包括支援センターが相談の窓口です。
地域の手助けと、家族ができる工夫
制度がない地域や、対象の条件に当てはまらない場合でも、手立てがないわけではありません。
- 自治会・町内会への相談──自治会によっては、近所の人がごみ出しを手伝う取り組みをしているところがあります。集積所の当番を免除してもらえることもあります
- 社会福祉協議会の有償ボランティア──多くの地域で、ちょっとした家事を手伝う住民参加型のサービスがあります。料金や頼める内容は地域によって違うので、親の住む地域の社会福祉協議会に確認してください
- 民間の家事代行・便利屋──決まった曜日の朝にごみ出しだけを頼めるところもあります。料金は依頼先によって幅があるので、事前に見積もりを取ってください
家族ができる工夫としては、次のようなものがあります。
- 分別をしやすくする──台所に品目ごとの小さなごみ箱を置き、ふたに曜日を書いておく
- 袋を小さく、軽くする──大きな袋を一度に出すより、小さな袋で回数を分けるほうが運びやすい場合があります
- 収集日カレンダーを見える場所に──冷蔵庫や玄関に、文字の大きいカレンダーを貼っておく。前日に電話で「明日は燃えるごみの日だよ」と声をかけるだけでも違います
- 帰省のときにまとめて片付ける──たまったごみや粗大ごみを、帰省のタイミングで一緒に出す。量が多いときは実家の片付けで出た大量のごみ、どう出す?収集と直接持ち込みの使い分けも参考にしてください
なお、粗大ごみについては、自分で指定場所まで運べない高齢の方のために、家の中から運び出して収集してくれる仕組みを設けている自治体もあります(千葉市など)。対象や立ち会いの条件があるので、粗大ごみの受付窓口で確認してみてください。
離れて暮らす家族が確かめておきたいこと
親のごみ出しについて、帰省のときや電話で確かめておきたいことを表にまとめました。
| 確かめること | 見るところ・聞き方 |
|---|---|
| ごみがたまっていないか | 勝手口・物置・ベランダに袋が置かれていないか |
| 集積所までの道のり | 距離、坂や段差、冬の朝の路面 |
| 収集日の把握 | カレンダーがあるか、曜日を間違えていないか |
| 自治体の制度の有無 | 市区町村のごみの担当窓口、またはホームページで「ごみ出し支援」を調べる |
| 介護保険の認定 | 要介護・要支援の認定の有無と、担当のケアマネジャー |
親に話を切り出すときは、「できなくなったでしょう」ではなく、「重い袋を持って歩くのは危ないから」「冬の朝は転びやすいから」と、安全の話として伝えると受け入れてもらいやすくなります。ごみ出しは、本人にとって「まだ自分でできている」ことを確かめる日課でもあります。全部を取り上げるのではなく、重いものだけ、雨の日だけ、と少しずつ手を借りる形から始めるのもひとつの方法です。
ごみが家の中に大量にたまってしまった場合は、片付けを急ぐより先に、なぜ出せなくなったのかを考えることが大切です。ゴミ屋敷化した実家、どこから手をつける?で、背景の見方と進め方を紹介しています。
まとめ
- ごみ出しは、時間・重さ・分別・天気が重なり、高齢の親が最初につまずきやすい家事
- 市区町村の「ふれあい収集」「戸別収集」などの制度は、令和2年度の調査で約35%の地方公共団体が導入。対象の条件は自治体ごとに違う
- 要介護の認定があれば、訪問介護の生活援助でヘルパーにごみ出しを頼める。訪問の曜日と収集日の組み合わせはケアマネジャーに相談する
- 制度がなくても、自治会、社会福祉協議会、民間サービス、家族の工夫で負担は減らせる
「たまったごみ袋」は、親の暮らしの変化に気づく大切なサインです。責めずに、どこで困っているのかを一緒に確かめるところから始めてみてください。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。