親が亡くなったあと、年金は自動で止まる?受給停止の届出と「未支給年金」の請求
年金は亡くなった月の分まで受け取れます。マイナンバーが収録されていれば死亡届は原則省略できますが、未支給年金は請求しないと出ません。受給停止の期限、未支給年金を請求できる遺族の順位と生計同一の考え方、時効5年、葬祭費・埋葬料まで、公的な情報をもとに整理しました。

親が亡くなったあと、しばらくしてから「年金は止めたのか」「振り込まれたお金は使ってよかったのか」と不安になる方が少なくありません。葬儀とその前後は目の前のことで手一杯で、年金の話までは頭が回らないのが普通です。
年金には、放っておくと「もらいすぎ」になって後から返すことになる部分と、こちらから請求しないと一円も受け取れない部分の両方があります。どちらも仕組みを知ってさえいれば難しい手続きではありません。この記事では、親が年金を受け取っていた場合に遺族が何をすることになるのかを、順番に整理します。
まず押さえたい「年金は亡くなった月の分まで出る」
公的年金は、亡くなった月の分まで受け取る権利があります。ここが分かりにくいのは、年金が「後払い」で振り込まれるからです。偶数月の15日に、その前の2か月分がまとめて振り込まれる仕組みなので、亡くなった時点ではまだ振り込まれていない分が必ず残ります。
たとえば5月に亡くなった場合、4月・5月分は6月15日に振り込まれる予定だったお金です。この「まだ受け取っていない分」が、あとで出てくる未支給年金です。逆に、6月以降の分は受け取る権利がないので、口座に入ってしまえば返すことになります。
つまり遺族がやることは二つ。これ以上振り込まれないように止めることと、まだ受け取っていない分を請求することです。この二つは同じ用紙で同時にできるようになっています。
受給を止める届出は、マイナンバーが載っていれば原則いらない
年金を受けている方が亡くなったときは「年金受給権者死亡届(報告書)」を出す、というのが従来の説明でした。ただし日本年金機構は、個人番号(マイナンバー)が収録されている方については、原則としてこの死亡届を省略できるとしています。住民票の死亡情報が機構に伝わるためです。
ここで誤解しやすいのが、「省略できる=何もしなくていい」ではないという点です。機構のよくある質問のページでも、死亡届は省略できても未支給年金の届出は別に必要だとはっきり書かれています。放っておくと、受け取れるはずのお金がそのままになります。
マイナンバーが収録されているかどうかは、こちらからは分かりません。分からないまま待つより、未支給年金の請求書を出すつもりで年金事務所に連絡したほうが早く片づきます。

届出が必要な場合の期限は「10日(国民年金は14日)以内」
マイナンバーが収録されていないなどで死亡届が必要な場合、日本年金機構は死亡後10日以内(国民年金は14日以内)に提出するよう案内しています。提出先は年金事務所または街角の年金相談センターで、郵送でも受け付けています。障害基礎年金・遺族基礎年金だけを受けていた方は、市区町村の窓口です。
用紙には死亡年月日、基礎年金番号、年金コード、生年月日を書きます。添える書類は年金証書と、亡くなったことが分かる書類(戸籍抄本や住民票の除票など)です。年金証書が見つからない場合でも手続きはできますので、無いことを理由に止めないでください。
止め忘れると、あとで「返してください」が来る
日本年金機構は「届出が遅れ、亡くなった日の翌日以後に年金を受け取ったときは、その分を後日お返しいただくことになります」と明記しています。実際、亡くなった翌月以降も振り込みが続き、半年ほどしてから返還の通知が届く、という話は珍しくありません。
やっかいなのは、そのお金がすでに葬儀費用や病院の精算に使われていることです。相続人の間で「誰が返すのか」でもめる原因にもなります。口座に入ってきた年金を、亡くなった月の分かどうか確かめずに動かさない。これだけで後々の面倒がかなり減ります。
なお、亡くなった方の預金口座は、金融機関が死亡を知った時点で凍結されます。凍結されると年金の振込自体が戻ってしまうこともあるため、年金の手続きと口座の扱いは、順番を考えて進めたほうがよい場面があります。
未支給年金 ― 請求できるのは「生計を同じくしていた遺族」
未支給年金は、亡くなった方が受け取るはずだった年金のうち、まだ支払われていない分です。相続財産ではなく、遺族が自分の権利として請求するお金という扱いになります。
請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族で、日本年金機構は次の順位を示しています。
| 順位 | 請求できる遺族 |
|---|---|
| 1 | 配偶者 |
| 2 | 子 |
| 3 | 父母 |
| 4 | 孫 |
| 5 | 祖父母 |
| 6 | 兄弟姉妹 |
| 7 | その他3親等内の親族 |
先の順位の人がいる場合、後の順位の人は受け取れません。たとえば母が健在なら、子が請求することはできません。
別居していた子でも請求できることがある
「生計を同じくしていた」と聞くと同居が条件のように思えますが、そうとは限りません。機構の案内でも、同じ住所の場合と別の住所の場合とで、添える書類が違うという形で整理されています。別居していても、生活費や療養費を送っていた、定期的に訪ねて身のまわりの世話をしていた、といった事情があれば認められる余地があります。
ただし別居の場合は、その事情を示す書類(生計同一関係に関する申立書や、第三者の証明など)を求められるのが通常です。遠方に住んでいる子が請求するときは、仕送りの記録や通院の付き添いの記録が手がかりになるので、思い当たるものは早めに探しておくと手戻りが少なくて済みます。
必要になる書類
機構が挙げているのは、年金証書、マイナンバーを確認できる書類、亡くなった方と請求者の続柄が分かる書類、生計を同じくしていたことが分かる書類、受取口座が分かる書類です。続柄の確認には戸籍が必要になるので、相続の手続きで戸籍を集めるなら、まとめて取ったほうが二度手間になりません。
時効は5年。それでも急いだほうがよい理由
未支給年金を請求する権利の時効は5年で、起算日は「受給権者の年金の支払日の翌月の初日」とされています。5年もあるなら急がなくてよいと思えますが、実際には早めに動いたほうが楽です。
理由は三つあります。ひとつは、受給を止める手続きと同じ用紙でできるので、一度に済ませたほうが単純に手数が少ないこと。もうひとつは、続柄や生計同一を示す書類は、時間が経つほど集めにくくなること。そして、遺産分割の話し合いが始まってからだと「このお金は誰のものか」で余計な議論が起きやすいことです。未支給年金は相続財産ではないのですが、通帳に入ってくるお金なので混同されがちです。
年金と一緒に片づけたい、期限のある手続き
年金の手続きだけを単独で進めるより、期限のあるものをまとめて確認しておくほうが確実です。公的な窓口で確認できる代表的なものを並べます。
| 手続き | 期限の目安 | 窓口 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなったときは3か月以内) | 死亡地・本籍地・届出人の所在地の市区町村 |
| 年金の受給停止(必要な場合) | 10日以内(国民年金は14日以内) | 年金事務所・街角の年金相談センター |
| 未支給年金の請求 | 時効5年 | 年金事務所・街角の年金相談センター |
| 葬祭費(後期高齢者医療・国民健康保険) | 窓口で確認 | 市区町村の担当窓口 |
| 埋葬料(健康保険) | 窓口で確認 | 加入していた健康保険(協会けんぽなど) |
葬祭費は、後期高齢者医療の被保険者が亡くなったときに、葬祭を行った方へ支給されるお金です。愛知県後期高齢者医療広域連合では5万円とされています。金額は都道府県の広域連合や市区町村によって決められているので、お住まいの窓口で確認してください。申請には葬祭を行ったことが分かる書類(会葬礼状や葬儀の領収書など)と、振込先の分かるものが要ります。
親が会社の健康保険に入っていた場合は、葬祭費ではなく埋葬料になります。協会けんぽでは一律5万円で、生計を維持されていた方が受け取れます。扶養している方がいない場合は、実際に埋葬を行って費用を払った方に、かかった費用の範囲で(上限5万円)支給されます。どちらも自動では出ないので、申請が必要です。
住民票の世帯主の変更や、介護保険の資格に関する届出など、市区町村ごとに期限が定められているものもあります。多くの市区町村が「おくやみコーナー」や案内冊子を用意しているので、死亡届を出すときに一覧をもらっておくのがいちばん早い方法です。
遠くに住む子が、実際にどう動くか
遠距離だと「平日に窓口へ行けない」がいちばんの壁になります。実際には、次の順番で進めると無駄が少なくなります。
- 最初の電話は年金事務所へ。基礎年金番号(年金証書や通知書に載っています)が分かれば、マイナンバーが収録されているか、死亡届が必要かを教えてもらえます。ここが分かるだけで、行くべき窓口が絞れます
- 未支給年金の請求書は郵送で受け付けてもらえる。用紙を送ってもらい、書き方を電話で確認しながら埋めれば、往復1回で済むことが多いです
- 帰省のときに、戸籍と書類集めをまとめて片づける。戸籍は本籍地が遠くても最寄りの市区町村で請求できる仕組み(広域交付)があります。年金と相続で必要な通数を先に確認しておくと、一度で足ります
- 通帳とキャッシュカードは動かす前に記録を。年金の入金がいつまであるか、何月分かを控えておくと、あとで返還の話になったときに説明できます
よくあるつまずき
- 「マイナンバーがあるから何もしなくていい」と思い込む。死亡届は省略できても、未支給年金は請求しないと出ません
- 年金証書が見つからないので止まってしまう。基礎年金番号が分かれば話は進みます。見つからない旨を伝えれば手続きできます
- 先順位の人がいるのに、別の遺族が請求してしまう。配偶者が健在なら、まず配偶者です。家族の間で誰が請求するかを先に決めておきます
- 振り込まれた年金をすぐ使ってしまう。亡くなった月の分までは受け取れますが、それ以降の分は返すことになります
- 葬祭費・埋葬料を申請し忘れる。どちらも自動では支給されません。葬儀の領収書や会葬礼状は捨てずに取っておきます
年金の手続きは、相続のように誰かと利害がぶつかるものではなく、順番どおりに出せば終わる作業です。ただ、期限があるものと、請求しないと出ないものが混ざっているのがややこしいところです。迷ったら年金事務所に電話をして、「何が必要で、何が不要か」を先に聞いてしまうのが、結局いちばん速い方法だと感じています。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。