実家の片付けで古い株券が出てきたら?紙の株券の扱いと、親の株式の探し方・相続手続き
実家の片付けで出てきた紙の株券は、2009年の株券電子化で「券」としては無効ですが、権利は信託銀行の特別口座に残っていることがあります。株主名簿管理人への問い合わせ、ほふりへの開示請求(手数料・期間)、特別口座の相続手続き、単元未満株の買取請求までを公的な案内をもとに整理しました。

実家の片付けをしていると、たんすの引き出しや仏壇の下の小引き出し、金庫の奥から、立派な紙に印刷された「株券」が出てくることがあります。会社名と株数、そして親の名前。あるいは、何十年も前に亡くなった祖父の名前が書いてあることもあります。
「これは価値があるのか」「捨てていいのか」「どこに持っていけばいいのか」。株式の取引をしたことがない家族ほど、手が止まってしまうものです。しかも、紙の株券がなくても、親が証券会社や信託銀行で株を持っていた、という場合もあります。ここでは、2009年の株券電子化で紙の株券がどうなったのか、親の株式をどうやって探すのか、見つかったあと相続の手続きをどう進めるのかを、公的機関や業界団体の案内をもとに整理します。
まず知っておきたいこと:上場会社の紙の株券は、もう「券」としては使えない
日本証券業協会の案内によると、2009年1月5日から、全国の証券取引所に上場している会社の株券は無効になり、株主の権利は電子的に管理される仕組みに変わりました。これを「株券電子化」といいます。いまは、株主の権利は証券保管振替機構(通称「ほふり」)と、証券会社・信託銀行などの口座で管理されています。
ここで大事なのは、株券という紙が無効になっただけで、株主としての権利まで消えたわけではないという点です。電子化の前に証券会社へ預けられず、家に保管されたままだった株券は「タンス株」と呼ばれます。日本証券業協会のQ&Aでは、株券の名義が本人のものであれば、上場会社が信託銀行などに株主の名義で開設した「特別口座」で権利が管理され、議決権や配当金を受け取る権利は従来どおり確保される、と説明されています。
つまり、実家で見つかった上場会社の株券は、紙としては無価値でも、その向こう側に「親名義の特別口座」がある可能性が高い、ということです。
名義が親ではない株券には注意
同じQ&Aでは、株券の名義が他人のまま(名義書換をしていないまま)の場合、特別口座はその他人の名義で開設されるため、最悪の場合は株主としての権利を失う可能性がある、とも書かれています。祖父や、親が昔株を買った相手の名前が書かれた株券が出てきたときは、自己判断で処分せず、その会社の株主名簿管理人(後述)に問い合わせるのが安全です。
上場していない会社の株券は、今も有効なことがある
電子化の対象は上場会社の株式です。親が勤めていた会社や、知人の会社など、上場していない会社の株券は対象外なので、株券そのものに意味が残っている場合があります。会社名で検索しても上場の情報が出てこない株券は、捨てずに「相続財産の書類」として保管しておきましょう。
紙の株券が出てきたときの動き方
片付けの現場では、次の順番で進めると迷いません。
- 捨てずに、書類と一緒に1か所へまとめる。株券、配当金の通知、株主総会の案内、証券会社からの封筒は、同じ箱に入れておきます。
- 会社名・株数・名義人を控える。スマホで表と裏を撮っておくと、後の問い合わせが楽になります。
- その会社の「株主名簿管理人」を調べる。上場会社は、株式の事務を信託銀行などに任せています。会社のホームページの「株式事務のご案内」「株式手続きのご案内」といったページに、管理人(三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行など)と問い合わせ先が載っています。
- 株主名簿管理人に、名義人が亡くなったことと、特別口座の有無を問い合わせる。相続の書類一式の案内を送ってもらえます。
社名が変わっていたり、合併でなくなっていたりする会社もあります。そのときは、合併先の会社の株式事務のページを探すか、株主名簿管理人をしている信託銀行の証券代行部に、株券の会社名を伝えて相談します。

紙の株券がなくても、親が株を持っていたかもしれない
実家から株券が出てこなくても安心はできません。電子化のあとに株を買った人は、そもそも紙の株券を持っていません。親が株や投資信託を持っていたかどうかは、次のような「手がかり」から探します。
| 手がかり | どこにあるか | わかること |
|---|---|---|
| 取引残高報告書・取引報告書 | 郵便物、書類の束 | 取引していた証券会社 |
| 配当金計算書・配当金領収証 | 郵便物、通帳の入金欄 | 株を持っていた会社、株主名簿管理人 |
| 株主総会の招集通知・株主優待 | 郵便物、優待品の箱 | 株を持っていた会社 |
| 通帳の入出金 | 通帳、ネット銀行の明細 | 証券会社への入金、配当金の振込 |
| スマホ・パソコンのアプリやメール | 親の端末 | ネット証券の口座 |
郵便物は特に大事な手がかりです。実家が空き家になっている場合は、郵便の転送を早めにかけておきましょう(空き家になった実家の郵便物どうする?)。ネット証券しか使っていなかった親の場合は、紙の手がかりがほとんど残りません。スマホに残る手がかりの探し方は親のスマホが開けない…デジタル遺品の探し方にまとめています。
手がかりがないときは「ほふり」に開示請求する
どこにも手がかりがないとき、相続人が使えるのが証券保管振替機構の「登録済加入者情報の開示請求」です。亡くなった親が、どの証券会社や信託銀行に口座を開いていたかを教えてもらえます。
| 項目 | 内容(証券保管振替機構の案内より) |
|---|---|
| わかること | 開示時点で口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧 |
| わからないこと | 上場株式等の銘柄名、取引履歴、保有残高(残高は証券会社等へ確認) |
| 手数料 | 1件6,050円(税込)。法定相続情報一覧図を出す場合は1件4,950円(税込)。該当がなくてもかかる |
| 請求方法 | 郵送のみ |
| 主な必要書類 | 開示請求書、請求者の本人確認書類、相続関係がわかる戸籍謄本等または法定相続情報一覧図、亡くなった方の住所確認書類 など |
| かかる期間 | 書類の受付から結果の送付まで2か月ほど |
結果が届くまで2か月ほどかかる、という点は覚えておいてください。相続税の申告が必要な家庭では、申告の期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)から逆算して、早めに請求しておくほうが安心です。戸籍の集め方は親の戸籍を出生から死亡まで集めるには?を参考にしてください。法定相続情報一覧図を先に作っておくと、ほふりの手数料が安くなるうえ、銀行や証券会社の手続きでも戸籍の束を何度も出さずに済みます。
なお、開示されるのは口座の「開設先」です。どの会社の株を何株持っているかは、開示された証券会社や信託銀行に、相続人として残高証明書などを請求して確かめます。
見つかったあとの相続手続き
株が見つかったら、どこで管理されているかによって、手続きの窓口が分かれます。
| 管理されている場所 | 手続きの窓口 | ポイント |
|---|---|---|
| 証券会社の口座 | その証券会社 | 相続人が株を受け継ぐ口座を用意し、そこへ移す |
| 信託銀行等の特別口座 | 株主名簿管理人の信託銀行等 | 特別口座は取引口座ではないため、そのままでは売れない |
三井住友信託銀行のFAQでは、特別口座は株式の取引口座ではなく、譲渡などの手続きはできないため、売却するには証券会社の口座へ振り替える手続きが必要だと説明されています。相続人が証券会社の口座を持っていない場合は、まず口座を開くところから始まります。
少ない株数なら「買取請求」で現金にできることも
タンス株には、売買の単位(単元)に満たない「単元未満株」が混じっていることがよくあります。単元未満株は市場でそのまま売れませんが、会社に買い取ってもらう「単元未満株式の買取請求」という方法があります。特別口座にある場合は、株主名簿管理人の信託銀行で手続きができます。相続人の間で「細かい株は現金にして分けよう」と決めた場合は、証券会社の口座を新しく作るより手間が少なく済むことがあります。
もらい損ねた配当金も一緒に確認する
タンス株の場合、配当金の領収証が届いていても換金されないまま、ということが珍しくありません。受け取っていない配当金があれば、相続の手続きとあわせて払い出してもらえることがあります。受け取れる期間は会社の定款で決められているので、株主名簿管理人に「未受領の配当金があるか」も必ず聞いておきましょう。
相続税の申告が必要なときの評価のしかた
相続税の申告が必要な家庭では、上場株式をいくらとして計算するかも気になるところです。国税庁のタックスアンサー(No.4632)によると、上場株式は原則として亡くなった日の最終価格(終値)で評価しますが、その価格が次の3つの月平均額のうち最も低いものを上回るときは、その最も低い価額で評価します。
- 亡くなった月の毎日の最終価格の月平均額
- その前月の毎日の最終価格の月平均額
- その前々月の毎日の最終価格の月平均額
つまり、亡くなった日の終値、当月平均、前月平均、前々月平均の4つのうち、いちばん低い金額を使える、ということです。証券会社や信託銀行が発行する残高証明書や、税理士に相談するときの資料として、亡くなった日付と銘柄の一覧をまとめておくと話が早く進みます。申告が必要かどうかの判断や計算は、税務署や税理士に確認してください。
費用と時間の目安
株式の相続でかかるお金は、戸籍や住民票などの取得費用、ほふりの開示請求の手数料(1件6,050円、法定相続情報一覧図を使えば4,950円)、郵送代が中心です。証券会社や信託銀行の相続手続きそのものに費用がかかるかどうかは、会社によって異なるので、案内書で確認してください。司法書士や行政書士などに書類集めから任せる場合は、株式の件数や相続人の人数で報酬が大きく変わります。依頼前に見積もりを取り、何が含まれるかを確認しましょう。
時間の面では、ほふりの開示に約2か月、そのあと信託銀行や証券会社の手続きにそれぞれ数週間から1か月以上かかることがあります。株が何社にも分かれていると、全部終わるまでに半年近くかかることもあります。「片付けで株券が出てきた」「郵便物に配当金の通知があった」という時点で、ほかの相続手続きと並行して動き始めるのがおすすめです。
家族で分担するときのコツ
遠方のきょうだいで手続きを分けるときは、「実家で書類を探す人」と「郵送の手続きを進める人」を分けると回りやすくなります。ほふりの開示請求も、信託銀行の相続手続きも、多くは郵送で完結するため、実家から離れて住む家族でも担当できます。
また、株式は遺産分割の対象になる財産です。見つかった株券や配当金の通知を、形見分けの感覚で誰かが持ち帰ってしまうと、あとで話がこじれます。形見分けと相続財産の線引きは形見分けのマナーと、親族間でもめないための進め方、預貯金の扱いは親が亡くなったあと、銀行口座はいつ凍結される?も参考にしてください。片付けの前に確保しておきたい書類は貴重品・重要書類、片付け前に確保すべきものリストにまとめています。
よくある質問
無効になった紙の株券は、捨ててもいいですか
上場会社の株券であれば、紙そのものに権利はありません。ただし、会社名や名義、株数を確かめる大事な手がかりです。株主名簿管理人に問い合わせて手続きの見通しが立つまでは、捨てずに保管しておくことをおすすめします。上場していない会社の株券は、今も有効な場合があるので処分しないでください。
親が認知症で、まだ存命です。株のことを調べられますか
ほふりの開示請求は、本人のほか相続人や法定代理人(成年後見人など)が請求できる仕組みです。存命の親の財産を家族が代わりに動かすには、原則として成年後見などの手続きが必要になります。元気なうちの備えは親の預貯金の管理、認知症に備えるで紹介しています。
古い株券を「買い取ります」という業者に売ってもいいですか
上場会社の株券は、紙として売っても株主の権利は移りません。コレクション目的の古い株券の売買と、株主としての権利の手続きは別物です。「株券を高く買う」という勧誘があっても、まず株主名簿管理人に権利の状況を確認してからにしましょう。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。