親が亡くなったあとの確定申告は?「準確定申告」が必要なケースと4か月の期限、そろえる書類
亡くなった親の所得税は、相続人が「準確定申告」で4か月以内に申告します。必要になるケースと不要なケース、年金の源泉徴収票が届く時期、控除の数え方、住民税・相続税との関係を公的情報で整理しました。

親が亡くなったあと、葬儀や年金、銀行口座の手続きがひと段落したころに出てくるのが「親の確定申告はどうするのか」という問題です。年金暮らしだった親なら、毎年申告していたかどうかも子どもは知らないことが多く、気づいたら期限が迫っていた、ということも起こります。
亡くなった人の所得税の申告は「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」と呼ばれ、ふつうの確定申告とは期限も出し方も違います。ここでは、国税庁や日本年金機構の公的な情報をもとに、準確定申告が必要になるケース、期限の数え方、そろえる書類、住民税や相続税との関係を、遠方に暮らす家族が実家で動くときの順番に沿って整理します。
準確定申告とは:期限は「4か月以内」
年の途中で亡くなった人の所得税は、相続人(遺言で財産を包括的に受け取る人を含む)が代わりに計算して申告・納税します。国税庁の説明をまとめると、基本は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる所得 | その年の1月1日から亡くなった日までの所得 |
| 申告する人 | 相続人(包括受遺者を含む) |
| 期限 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内(申告と納税の両方) |
| 提出先 | 亡くなった人の、亡くなった当時の納税地を所轄する税務署 |
| 添付するもの | 相続人全員の氏名・住所・続柄などを書く「準確定申告書の付表」 |
ふつうの確定申告は「翌年の2月16日から3月15日まで」ですが、準確定申告は亡くなった時期に関係なく「4か月」で区切られます。たとえば5月に亡くなったことを知った場合は、9月が期限の目安です。葬儀、四十九日、相続の話し合いと重なる時期なので、気づいたときには残り1か月ということも珍しくありません。
申告が必要な親、しなくてよい親
亡くなった人全員に準確定申告が必要なわけではありません。もともと確定申告が必要だった人かどうかが分かれ目です。年金暮らしの親であれば、次のように考えると整理しやすくなります。
| 親の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 実家の一部や駐車場、田畑を貸して家賃・地代を受け取っていた | 不動産所得があるため、申告が必要になることが多い |
| 個人で商売や農業をしていた | 事業所得があるため、申告が必要になることが多い |
| 公的年金の収入が年400万円を超えていた | 申告が必要 |
| 公的年金が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下 | 「確定申告不要制度」の範囲。ただし還付がある場合は申告できる |
判断に迷うときは、親の家にある前年までの「確定申告書の控え」を探すのが近道です。毎年申告していた形跡があれば、今年も準確定申告が必要になる可能性が高いと考えてください。不動産収入や事業収入がある家では、帳簿や通帳の入金記録も合わせて確認します。
「出さなくていい」でも、還付があるなら出したほうがいい
年金だけで暮らしていた親は、確定申告不要制度の範囲に入っていることがほとんどです。この場合は準確定申告をしなくても、ペナルティはありません。
ただし、国税庁は、確定申告不要制度の対象になる人でも、医療費控除や社会保険料控除などで所得税の還付を受けるための申告はできると案内しています。年金からは所得税が差し引かれていることが多く、亡くなる前の入院費や施設の費用がかさんでいた年は、申告すれば税金が戻ってくることがあります。
とくに、亡くなるまでの数か月に入院や手術が続いた、介護施設に入っていた、という場合は、医療費の領収書を一度集計してみる価値があります。戻ってくる金額は家によってまちまちですが、親が最後に払っていた費用を整理する機会にもなります。
1月〜3月に亡くなった場合は、前年分にも注意
見落としやすいのが、確定申告の時期と重なって亡くなったケースです。国税庁は、前年分の確定申告書を提出しないまま亡くなった場合、前年分についても同じく「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」に申告が必要としています。
つまり、毎年申告していた親が2月に亡くなった場合、相続人は「前年1年分」と「今年1月1日から亡くなった日まで」の2年分を、4か月以内に出すことになります。前年分が提出済みかどうかは、親の家の書類や、税務署への問い合わせで確かめてください。

そろえる書類と、年金の源泉徴収票が届く時期
準確定申告の準備は、ほとんどが「親の家で書類を探すこと」です。主に次のものをそろえます。
| 書類 | どこにあるか・どう取るか |
|---|---|
| 年金の源泉徴収票(準確定申告用) | 日本年金機構から発送される(時期は下記) |
| 給与・不動産・事業の収入がわかるもの | 勤務先の源泉徴収票、賃貸の契約書や入金記録、帳簿など |
| 医療費の領収書 | 病院・薬局・施設の領収書。亡くなった日までに支払った分 |
| 社会保険料の支払いがわかるもの | 国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険料の納付書や通知 |
| 前年までの申告書の控え | 親の家の書類棚など |
| 準確定申告書の付表 | 国税庁のホームページや税務署で入手し、相続人の情報を書く |
このうち時間がかかるのが年金の源泉徴収票です。日本年金機構の案内では、準確定申告用の源泉徴収票は、死亡届や未支給年金の手続きのあと、おおむね2〜3か月で発送されます。また、亡くなった日が12月の支払日から翌年2月の支払日の間にある場合は、準確定申告用ではなく通常の「公的年金等の源泉徴収票」が発行されるとしています。
期限が4か月、源泉徴収票が届くまで2〜3か月。この数字を並べると、年金の手続きを先延ばしにすると準確定申告の準備期間がほとんど残らないことがわかります。年金の停止と未支給年金の手続きは、早めに済ませておくのが結果的に近道です。届くのが遅いときは、亡くなった方の基礎年金番号を用意して、ねんきんダイヤルに確認するよう案内されています。
控除の数え方は「亡くなった日まで」
準確定申告では、所得だけでなく控除も「亡くなった日」で区切ります。国税庁の説明では、次のように扱います。
- 医療費控除:亡くなった日までに、亡くなった本人が支払った医療費が対象。亡くなったあとに家族が支払った入院費は、親の準確定申告には入りません
- 社会保険料控除・生命保険料控除など:亡くなった日までに支払った保険料が対象
- 配偶者控除・扶養控除:亡くなった日の現況で判定し、月割りにはしない
亡くなったあとに届いた入院費の請求書を家族が払った場合、その分は親の準確定申告には使えません。一方で、相続税の計算では、亡くなった時点で残っていた借入金や未払金などの確実な債務は遺産から差し引けるとされています。どちらに入るかは支払った日で変わるので、領収書は日付が見える形で取っておきましょう。
相続人が何人もいるときの出し方
兄弟姉妹など相続人が2人以上いる場合、国税庁は次のどちらかの方法を示しています。
- 相続人全員が連名(連署)で、1通の申告書を提出する
- 各相続人が別々に提出する。この場合は、自分の申告内容をほかの相続人に知らせる
実務では、実家の近くに住む人や、親の書類をよく知っている人が代表してまとめ、ほかの兄弟に内容を共有して連名で出す形が多いようです。還付金を代表者がまとめて受け取る場合は、別に委任状が必要になります。遠方の兄弟がいる場合は、付表への記入や署名を郵送でやりとりする時間も見込んでおきましょう。
納める税金を誰が負担するか、戻ってきた還付金をどう分けるかは、相続の話し合いともかかわります。あとで揉めないよう、計算の結果と書類の写しは相続人全員が見られるようにしておくと安心です。
住民税と相続税はどうなるか
所得税と一緒に気になるのが住民税です。住民税は、その年の1月1日に住所がある市区町村で、前年の所得をもとに課税されます。千葉県柏市の案内では、1月1日以降に亡くなった場合、その年度の住民税は年の途中で亡くなっても全額納める必要があり、納税義務は相続人に引き継がれます。その一方で、亡くなった年の所得については、翌年の1月1日に本人がいないため、翌年度の住民税は課税されません。
市区町村によっては、相続人の代表者を決めて「相続人代表者指定届」を出すよう求められます。実家の市区町村から届く通知は、遠方に住む家族の手元には自動で転送されないことが多いので、郵便物の転送や不在届とあわせて確認してください。
相続税との関係では、国税庁は、亡くなったあとに相続人が納めることになった所得税などの税金は、亡くなった時点で確定していなくても債務として遺産総額から差し引けるとしています。ただし、申告が遅れたことで生じた延滞税や加算税は差し引けません。準確定申告を期限内に出すことは、相続税の計算の面でも意味があります。
なお、家族が請求して受け取る「未支給年金」は、国税庁の質疑応答で、亡くなった人の相続税の対象にはならず、受け取った遺族の一時所得になるとされています。親の準確定申告に入れるものではないので、混同しないようにしましょう。
進める順番の目安
- 亡くなってすぐ〜2週間:死亡届、年金の停止と未支給年金の請求。ここが遅れると源泉徴収票も遅れる
- 1か月ほど:実家で前年までの申告書の控え、医療費の領収書、収入の記録を探す。相続人を戸籍で確定させる
- 2〜3か月:年金の源泉徴収票が届いたら、申告が必要か・還付があるかを判断する
- 3〜4か月:付表に相続人の情報を書き、連名または各自で提出。納税があれば期限内に納める
相続税の申告が必要な家は、その期限が10か月以内です。準確定申告で確定した税額や還付額は相続税の計算にもかかわるため、税理士に依頼する場合は、準確定申告と相続税をまとめて相談すると二度手間が減ります。費用は依頼先や内容によって幅があるので、見積もりの段階で確認してください。
遠方の家族が実家でやっておくこと
準確定申告で苦労するのは、計算よりも「書類がどこにあるかわからない」ことです。実家に帰るたびに少しずつ進めるなら、次の順番がおすすめです。
- 食卓まわり、電話台、仏間の引き出しなど、親が書類を置いていた場所をひと通り開けて、税金・年金・病院の封筒を一か所に集める
- 医療費の領収書は、日付順に並べて「亡くなった日まで」と「亡くなったあと」に分けておく
- 市区町村や税務署、年金機構からの郵便が実家に届き続けるため、郵便の転送や不在届で受け取れるようにしておく
- 前年の申告書の控えが見つかれば、提出先の税務署と、どんな収入を申告していたかをメモしておく
親が元気なうちにできることもあります。毎年確定申告をしているかどうか、申告書の控えや医療費の領収書をどこにしまっているかを、一度聞いておくだけで、いざというときの探しものがぐっと減ります。年金の受給停止と未支給年金、銀行口座の凍結と仮払い制度、戸籍の集め方の記事もあわせて読むと、亡くなったあとのお金の手続きの流れがつかみやすくなります。
よくある質問
期限の4か月を過ぎてしまったらどうなりますか
納める税金がある場合、期限を過ぎると延滞税などがかかることがあり、これは相続税の計算でも差し引けません。過ぎてしまったと気づいた時点で、できるだけ早く税務署に相談して提出してください。
介護保険料や医療保険料が年金から天引きされていました。控除に使えますか
亡くなった日までに支払った社会保険料は、社会保険料控除の対象です。年金から差し引かれていた分は、年金の源泉徴収票で確認できます。
障害者控除は準確定申告でも使えますか
要介護の親が市区町村の「障害者控除対象者認定書」を受けていた場合など、条件にあてはまれば準確定申告でも検討できます。認定書の取り方は要介護の親と障害者控除の記事で整理しています。判定の時期などは税務署に確認してください。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。