高齢の親の秋冬の予防接種、何をいつ受ける?インフルエンザ・新型コロナ・肺炎球菌・帯状疱疹の定期接種と費用の目安
65歳以上の親が受けられる定期接種は、インフルエンザ・新型コロナ・肺炎球菌・帯状疱疹の4種類。2026年度は肺炎球菌のワクチンが切り替わり、帯状疱疹は対象の年度が決まっています。時期と自己負担の目安、離れて暮らす家族が確認しておきたいことを整理しました。

10月に入ると、かかりつけの医院の入口に「インフルエンザ予防接種 始めました」の貼り紙が出始めます。離れて暮らす親に電話で「今年は受けた?」と聞いても、「まだ」「そのうち行く」「コロナのほうはどうするんだっけ」と、返事があいまいなことは珍しくありません。
高齢の親が秋冬に受けられる予防接種は、インフルエンザだけではありません。新型コロナ、肺炎球菌、帯状疱疹と種類が増え、それぞれ対象になる年齢も、受けられる時期も、自己負担の額も違います。しかも2026年度は、肺炎球菌のワクチンが切り替わるなど、去年までの知識がそのまま使えない部分もあります。
この記事では、65歳以上の親が対象になる「定期接種」の4種類について、市区町村の案内をもとに、時期・費用の目安・家族が確認しておきたいことを順番に整理します。受けるかどうかを決めるのは親本人とかかりつけの医師ですが、家族が全体像を知っておくだけで、声のかけ方がずいぶん具体的になります。
高齢者の「定期接種」は4種類。受けるかどうかは本人が決める
予防接種には、法律で市区町村が行うことが決まっている「定期接種」と、本人が希望して全額自費で受ける「任意接種」があります。定期接種になっているものは、市区町村が費用の多くを負担するため、本人の支払いは数千円程度に抑えられています。
2026年度に高齢者が対象になっている定期接種は、次の4種類です。
- インフルエンザ ── 毎年秋から冬にかけて1回
- 新型コロナ ── 毎年秋から冬にかけて1回
- 肺炎球菌 ── 65歳のときに1回だけ
- 帯状疱疹 ── 65歳のときと、経過措置で70歳・75歳など5歳刻みの年に
高齢者の定期接種は、子どもの予防接種とは扱いが異なり、本人に「受けるよう努める義務」はありません。あくまで本人が希望した場合に、公費の助成を受けて接種できる仕組みです。どの自治体の案内にも「自らの意思で接種を希望する方」と書かれているのはそのためです。
対象は原則として65歳以上ですが、60歳から64歳でも、心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に身体障害者手帳1級相当の障害がある方は対象になります(帯状疱疹は、60〜64歳では免疫機能の障害がある方が対象)。この場合は、接種のときに手帳の写しや医師の診断書を出すよう求められます。
4種類の時期と費用の目安
自己負担の額と受けられる期間は、市区町村ごとに決まっています。ここでは名古屋市と横浜市、江東区が公表している2026年度の内容を例として並べます。同じ定期接種でも、住んでいる場所によって金額や期間が違うことがわかります。
| 種類 | 受ける時期 | 自己負担の例 |
|---|---|---|
| インフルエンザ | 毎年1回。名古屋市は10月1日〜翌年1月31日、横浜市は9月下旬〜12月31日 | 名古屋市 1,500円/横浜市 2,300円 |
| 新型コロナ | 毎年1回。名古屋市は10月1日〜翌年3月31日、横浜市は10月1日〜翌年2月28日 | 名古屋市 7,700円/横浜市 7,000円 |
| 肺炎球菌 | 65歳のときに1回(20価ワクチン) | 江東区 4,000円または5,500円(生年月日で異なる) |
| 帯状疱疹 | 対象の年度に、生ワクチン1回か組換えワクチン2回 | 横浜市 生ワクチン4,000円/組換えワクチン1回10,000円(2回で20,000円) |
生活保護を受けている世帯や、市民税が非課税の世帯は、自己負担が無料になる自治体が多くあります。名古屋市の場合、接種のときに証明書類を出すと無料になりますが、接種したあとに書類を出しても返金されないと明記されています。対象になりそうなら、受ける前に必要な書類を確認しておくのが大切です。
金額や期間は毎年見直されます。実際に受けるときは、親が住民登録をしている市区町村の案内で、その年度の内容を確かめてください。

インフルエンザと新型コロナは「毎年」の接種
インフルエンザと新型コロナは、どちらも毎年秋から冬に1回受ける定期接種です。期間内の1回が公費の対象で、2回目以降は全額自己負担になる、と案内している自治体もあります。
注意したいのは、期間の始まりと終わりが自治体ごとに違うことです。横浜市は新型コロナの定期接種を10月1日からとしており、9月中に受けると定期接種の対象外になると書いています。反対に、終わりの日は名古屋市のインフルエンザが1月31日、横浜市が12月31日と、1か月の差があります。「年明けでも受けられるだろう」と思っていると、期間が過ぎていることもあります。
新型コロナは、インフルエンザに比べて自己負担が高めです。上の例でも7,000円台で、年金暮らしの親にとっては小さな額ではありません。受けるかどうか迷っているときは、持病の有無やこれまでの体調をふまえて、かかりつけの医師に相談するよう勧めるのがよいでしょう。費用の話を家族が先に出しておくと、「高いからやめておく」と一人で決めてしまうのを防げます。
インフルエンザと新型コロナを同じ日に受けられるかどうかも、よく聞かれる点です。医師が必要と認めた場合は同時に受けられるとされていますが、体調や医療機関の方針によって判断が変わるので、予約のときに確認しておくと安心です。
肺炎球菌は2026年度からワクチンが変わった
肺炎球菌の定期接種は、65歳のときに1回だけ受けるものです。2026年4月1日から、使うワクチンが従来の23価のものから、20価の結合型ワクチン(プレベナー20)に切り替わりました。
以前は、65歳を過ぎた方でも5歳刻みの年齢で受けられる経過措置がありましたが、その措置は終わっています。江東区の案内でも、対象を広げる経過措置は令和5年度で終了したと書かれています。つまり、今の制度で公費の対象になるのは、その年度に65歳になる方が中心です。
もう一つの条件として、江東区では「過去に肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方」を対象にしています。以前に自費で受けたことがある場合は対象外になることがあるので、親が昔受けたかどうか覚えていないときは、予防接種の記録や、かかりつけの医院のカルテで確認してもらうのが確実です。
65歳以上の親で、定期接種の年齢を過ぎている場合は、受けるとしても任意接種(全額自費)になります。必要かどうかは医師の判断になるので、家族は「対象かどうか」を確かめる役に回るのがよいでしょう。
帯状疱疹は「対象の年度」を逃さない
帯状疱疹のワクチンは、2025年度から定期接種になりました。対象は、その年度に65歳になる方に加えて、2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度に70・75・80・85・90・95・100歳になる方です。
ここが大切なポイントで、帯状疱疹の定期接種は「65歳以上なら誰でもいつでも」ではありません。たとえば2026年度なら、横浜市の案内では、70歳の対象は昭和31年4月2日から昭和32年4月1日生まれの方と決まっています。対象の年度を過ぎると、次の機会は5年後になり、経過措置の期間が終われば機会そのものがなくなります。
ワクチンは2種類から選べます。
- 生ワクチン ── 皮下に1回。横浜市の自己負担は4,000円
- 組換えワクチン ── 筋肉内に2回(通常2か月以上あけて)。横浜市の自己負担は1回10,000円、2回で20,000円
費用や回数だけでなく、持病や飲んでいる薬によって選べるワクチンが変わることがあります。どちらにするかは医師と相談して決めるものですが、組換えワクチンは2回目までに2か月以上かかるので、年度末ぎりぎりに1回目を受けると2回目が期間に入らないことがあります。対象の年度だとわかったら、早めに動くよう声をかけておくと安心です。
横浜市の場合、2026年度の帯状疱疹の定期接種は7月1日から翌年3月31日までです。期間も自治体によって違うので、親の住む市区町村の案内で確かめてください。
離れて暮らす家族が確認しておきたいこと
予防接種は、本人が医療機関に行って受けるものです。離れて暮らしていると家族が付き添うのは難しいですが、事前に確認できることはたくさんあります。
1.親が今年どれの対象になるか
インフルエンザと新型コロナは65歳以上なら毎年対象ですが、肺炎球菌と帯状疱疹は年齢で決まります。親の生年月日と、市区町村の案内に書かれた生年月日の範囲を見比べるのが確実です。対象になる年度に予診票や案内を郵送している自治体もあるので、「市役所から予防接種の封筒が届いていないか」を聞いてみるのも手がかりになります。
2.どこで受けられるか
定期接種は、住民登録のある市区町村の制度です。受けられるのは原則としてその自治体と契約している医療機関で、名古屋市のように、市外でも県内の協力医療機関なら受けられる(ただし期間が短い)という自治体もあります。施設に入っている、子どもの家に身を寄せているなどで住民票と実際の居場所が違う場合は、事前の手続きが必要になることがあるので、住民票のある市区町村に問い合わせてください。
3.持ち物と、免除の書類
住所・氏名・年齢が確認できるもの(マイナンバーカードや運転免許証など)が必要です。免許を返納している親は、マイナンバーカードや資格確認書などで代わりになるかを確かめておきましょう。自己負担の免除を受けるなら、証明書類は接種の前に用意します。
4.受けた記録を家族でも把握する
いつ、どのワクチンを受けたかは、本人が忘れてしまいやすい情報です。特に肺炎球菌と帯状疱疹は定期接種としては一度きりのものなので、受けた日とワクチンの種類をお薬手帳に貼っておく、家族のメモに残すなどしておくと、あとで迷いません。
かかりつけ医やお薬手帳の情報を家族で共有する方法は、かかりつけ医・お薬手帳・緊急連絡先を家族で共有するで詳しく紹介しています。通院の付き添いが難しいときの頼み先は、親の通院に付き添えないときの記事も参考にしてください。
声のかけ方は「全部受けて」ではなく「どれを受ける?」
予防接種の話は、言い方によっては親が身構えてしまいます。「年なんだから全部受けて」と言われると、受けるかどうかを自分で決めたい親ほど反発しがちです。
おすすめは、選択肢を並べて「今年はどれを受ける?」と聞く形です。インフルエンザはいつも受けているか、新型コロナはどうするか、肺炎球菌や帯状疱疹の対象の年かどうか。一つずつ確認していくと、親も自分の状況を整理しやすくなります。
帰省のタイミングが合えば、冷蔵庫に貼られた市の案内や、届いている封筒を一緒に見るのがいちばん確実です。秋の帰省で実家を見るときのポイントは久しぶりの帰省で親の様子が気になるときの記事に、冬の入浴の備えは冬の実家のお風呂とヒートショックの記事にまとめています。
予防接種は、感染症にかかったときに重くなるのを防ぐための手段の一つです。受けたあとも、手洗いや換気、体調が悪いときに早めに受診することは変わりません。親が自分で決めて、自分のペースで受けられるよう、家族は情報と段取りで支えるくらいの距離感がちょうどよいでしょう。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務・不動産取引などの個別の判断に関する助言ではありません。制度・費用は地域や時期により異なります。実際のご判断は、自治体および各分野の専門家にご相談ください。